米ホワイトハウスのAI顧問を務めるシュリラム・クリシュナン氏が、その職を辞することが明らかになった。TechCrunchの報道によれば、トランプ政権が国家安全保障におけるAI利用を加速させる新たな指令を出した直後の退任であり、今後の米国のAI規制戦略が大きく変容する可能性を示唆している。
クリシュナン氏の退任は、トランプ政権が2026年6月5日に発表した「国家安全保障におけるAI利用に関する歴史的指令」(NSPM-11)の直後に行われた。ホワイトハウスの公式発表によれば、この指令はAIを国家安全保障の基盤と位置づけ、開発の迅速化と官民連携の強化を強く打ち出す内容である。これにより、AI政策の優先順位が従来の「安全な開発・規制」から「国家競争力の維持・軍事的優位性の確保」へと明確にシフトしたと見られている。
クリシュナン氏は、マイクロソフトやAndreessen Horowitzでの経歴を持ち、技術革新と規制のバランスを模索する政権の橋渡し役として重要な役割を担ってきた。Times of Indiaの解説では、彼の退任によりシリコンバレーの技術的知見を政策に反映させる調整機能が失われると指摘されている。今後の政策決定において、現場の技術コミュニティの声が届きにくくなる懸念が強まっている。
トランプ政権は、連邦政府内でのAI導入を巡る説明責任の強化において、より強硬な姿勢を示している。Newsweekの分析によれば、政権は官僚組織の再編や連邦職員の責任追及を掲げる大統領令を立て続けに発出しており、AI政策もこの大きな潮流の中に組み込まれたと見るのが妥当である。今後は、技術的な知見を持つ専門家よりも、国家安全保障や政治的な執行力を重視する人事が優先される公算が大きい。
クリシュナン氏が調整を図ってきた慎重な規制アプローチが、今後急速に解体・再編される可能性は高い。Straits Timesの報道が示唆するように、彼の残した影響力が引き継がれないことは、シリコンバレーのテック企業にとって重大な懸念材料である。企業は従来のコンプライアンス戦略の抜本的な見直しを迫られる可能性があり、規制環境の不透明感は今後さらに増すだろう。