OpenAIは、米国のユーザー向けにApple Healthや医療記録とChatGPTを連携させる新機能「Health in ChatGPT」の提供を開始した。これにより、個人の健康データに基づいたパーソナライズされた健康管理が実現する。しかし、機微な医療情報の取り扱いとAIの責任の所在には慎重な議論が求められる。
OpenAIの発表によれば、ウェアラブル端末や医療機関に分散していた個人の健康データをChatGPTに集約する「Health in ChatGPT」が米国で公開された。この新機能では、医療特化型の推論モデル「GPT-5.6 Sol」が導入されており、ユーザーは検査結果の解説や過去の健康状態との比較、日々の活動記録に基づいた生活習慣の提案をAIから受けることが可能になる。AIが文脈を理解した上で助言を行うことで、個人の健康管理を劇的に変える可能性を秘めている。
OpenAIの公開データでは、週に3億人以上がChatGPTに健康関連の質問を投げかけているという。この膨大な需要に対し、同社は専門的な知見を補完するインターフェースを提供することで、ヘルスケア体験の最適化を目指す。Googleの「AIによる概要」が健康関連で誤解を招く情報を提供し、一部機能を非表示にした事例を鑑みると、信頼性の高い情報提供への期待は極めて高い。
新機能の核となるのは、医療特化型の推論モデル「GPT-5.6 Sol」である。このモデルは、複雑な医療文書を平易に解説し、時系列でのデータ変化を分析する能力を強化している。OpenAIの技術文書によれば、連携された医療データがAIモデルの学習や広告配信には一切使用されない。また、暗号化やユーザーによるアクセス制御といった多層的なセキュリティ対策が講じられ、ユーザー自身がデータアクセスを許可または拒否できる制御権を持つ。
「Health in ChatGPT」は、AIが医療の専門的判断を代替するのではなく、あくまで「患者の自己管理を支援するツール」として位置付けられている。患者が自身の健康状態をより深く理解し、医師との対話や意思決定をサポートするための強力な補助ツールとして機能することが期待される。これにより、既存の医療基盤の運用負荷を直接的に軽減するものではないが、患者のヘルスリテラシー向上を通じて間接的に医療現場の効率化に貢献する可能性がある。
AIによるヘルスケア支援の普及には、未解決の論点が多い。特に、AIの誤った解釈や不適切な助言が健康被害を招いた際の責任の所在は最大の焦点である。報道によれば、2026年にはChatGPTの医療アドバイスが原因で健康被害が生じたとして、OpenAIが複数回提訴された事例も報告されている。日本においては、厚生労働省がAI活用医療における最終的な判断責任は「医師」にあるとの見解を示しており、AIは診療支援ツールに留まる。医療機関とのシステム連携における標準化や、データ互換性の確保、さらには米国以外の地域への展開における各国の医療規制への対応も今後の課題となる。